ヴィンテージポスターの魅力。

ポスターといえば、昔は好きな映画やミュージシャンのポスターをよく買っていました。1000~1500円くらいで、中にはクルッと丸めた状態でビニール袋に入れて売られているものもありましたね。その印象が強く残っているからか、日本ではポスターと聞くと、安いものというイメージが強く残っています。

しかし、ポスターとは本来は印刷物のこと。手描きしたものではなく、印刷したものであれば、世界共通で通じるのが「ポスター」です。なので、私はあえて高価なヴィンテージ品でも印刷物はポスターと呼ぶようにしています。

ポスターが一般化していったのは1950年代以降。特にアートの世界では、大衆に向けたポップアートが登場し、印刷物としてのアートが広まりました。アンディ・ウォーホルがその代表格で、彼はシルクスクリーンを多用しました。印刷方法は、手間のかかるリトグラフ(石版画)やシルクスクリーンプリントから、次第にもっと効率化させたオフセットプリントに変わっていったという流れです。

技術が進んだ現代では、インクジェットプリントのように、一度に十数色のインクを使い、綺麗な発色で色ズレなどもなく一気に仕上げることができます。ヴィンテージ品は、インクの発色にムラがあったり、色が重なったりズレたりしている箇所もあり、「完全な状態かどうか」という観点では、現代のものの方が上回っているといえるでしょう。でも、「味わいや風合い」という観点でいうと、それでは物足りないのです。

その感覚は最近本当に強く感じます。例えば1990年代のものであっても、現代にはないディテールや雰囲気がより感じられるようになり、どんなジャンルでもちょっと古いものがすごく魅力的に思える時代になったと実感しています。それは、いまは何でも効率化を優先し、一気に同じものを「完全な状態」で大量生産しているから。昔も大量生産しようとしていましたが、技術的な問題から工程や素材選び、デザインなどに時間をかけていましたし、生産工程でも人の手が入ることで個体差が生まれたりもしました。これらがヴィンテージならではの「味わいや風合い」となり、現代のものにはない魅力となるのです。「なんかレトロでいいな」と思えるものは、そういうことなんです。

私が好きなヴィンテージのアートポスターは、まさにそういう存在のもの。1960〜90年代に作られたもので、特に好きなのが展覧会用のもの。写真のリトグラフのポスターを例にすると、これはニューヨークのアンドレ・エメリック・ギャラリーでデイヴィッド・ホックニーの展覧会が開催された時のもので、下段のテキストがその開催情報になっています。こういう展覧会のもの以外では、ポスターに使っている作品名や作者のテキストだったり、所蔵する美術館のテキストがデザインされているものもあります。

このテキストも含めて、私はポスター全体をひとつのデザインとして楽しんでいます。テキストの有無でポスターのカッコよさが全然違って、テキスト入りの方がデザインが格段に引き締まってスタイリッシュに感じます。私はファッション的に楽しんでいるので、プリントTシャツのデザインに近い感覚なんだと思います。テキストの書体やデザインの仕方にも個性があって、本当に面白いんですよ。

実はヴィンテージポスターには、重要な情報がきちんと欄外に印字されています。コピーライトと呼ばれるのですが、原画の作者と制作年、所蔵している美術館、ポスターの制作年と印刷会社や販売会社、版権元など様々な情報が記載されているんです。で、リトグラフやシルクスクリーンなら、特に刷った工房や印刷会社の情報が重要で、これによってヴィンテージとしての価値だったり、アートとしての価値も大きく変わってくるんです。だから、私はなるべく額装の際に、このコピーライトがチラッとでも見えるようにしたく、NOT A MUSEUMのヴィンテージポスターのオーダー額装も、その額を制作する職人さんにそのことを伝えた上で作っていただいてます(ものによってはどうしても隠れてしまうものもあります)。

印刷のアートなんて本当のアートじゃない。そう思われる方もいらっしゃると思いますが、印刷物と侮るなかれ。印刷されたポスターだからこそ私には魅力的になることも。例えばゴッホの『ひまわり』。原画の重厚な雰囲気がリトグラフのポスターになることで、もっと明るくポップになり、私はファッション感覚で「飾りたい」となるわけです。写真のものはフランスの老舗ムルロ工房のリトグラフで風合いも最高。リトグラフでは一級品で、しかも1987年製。最近の変なコピー品とは違い、品格があって質感もウンチクも満載。これがヴィンテージポスターならではの魅力です。

技術がどんどん進化したことで製品のクオリティは上がったように見えて、実は長く使えるものではなくなっているように感じます。ヴィンテージと呼ばれるものの魅力は、これからもずっと大切に愛用できること。汚れたりダメージを受けても、それを味わいとして楽しめるものであることが重要です。これは他のヴィンテージ品でも同様ですね。デニムでもTシャツでも雑誌でも一緒。それらの話は今度しますが、私はアートポスターも他のヴィンテージ品と同じ感覚で楽しむのがいいと思います。自己満足度も高まりますしね。ちなみに海外ではヴィンテージポスターは非常に評価が高く、価格は日本の倍以上するものも多いです。しかも角が折れてたり湿気で歪んでいても高額。だからこそ、いまのうちに日本で手に入れておかないと、絶対後悔することになっちゃうと思います。私も仕事頑張ってもっともっと買います!

2026年7月31日
NOT A MUSEUM プロデューサー 
三浦 正行